『ズートピア』ネタバレ感想と評価 『ゴッドファーザー』好きも必見!
『アーロと少年』以来のディズニー系映画だったのですが、いやはや。これは傑作ですね! ディズニーの底力を見た、と思いました。
おすすめ度 ★★★★★
ディズニーの本気度 ★★★★★
映画好きの心をくすぐる度 ★★★★☆
日本語版予告編
『ズートピア』あらすじ
動物たちの“楽園”ズートピアで、ウサギとして初の警察官になったジュディ。でも、ひとつだけ問題が…。警察官になるのは通常、クマやカバのように大きくてタフな動物たちで、小さく可愛らしすぎる彼女は半人前扱いなのだ。だが、ついにジュディも捜査に参加するチャンスが!ただし、与えられた時間はたった48時間。失敗したらクビで、彼女の夢も消えてしまう…。頼みの綱は、事件の手がかりを握るサギ師のキツネ、ニックだけ。最も相棒にふさわしくない二人は、互いにダマしダマされながら、ある行方不明事件の捜査を開始。だが、その事件の背後にはズートピアを狙う陰謀が隠されていた…。
ディズニーが見せた底力
作品にはアメリカをはじめとした現代社会のさまざまな問題や直面している困難な課題が寓意的に描かれています。しかし、あくまでも軽快なエンターテインメントに昇華させているのが本当に見事です。なにも知らない子供でも大笑いできるシーン満載なんですよ。「寓意的」と書いたのですが、肉食獣と草食獣の対立という構造を通して、ここ数年の世情が色濃く反映されていると感じました。具体的には、
・人種間対立
・黒人と白人
・マジョリティとマイノリティ
・イスラム教徒とキリスト教徒
とくに黒人と白人の対立に関しては、この映画が警察を舞台にしている点が象徴的だと思いました。アメリカではロス暴動をはじめとして、白人を中心とした警察機構と黒人社会の対立が長い間問題となっています。
また、それ以上に個人的に強く感じたのは、9.11以降頻発しているイスラム教徒/ISISによるテロを受けてのメッセージ。ある集団の一部が犯罪を犯したからといって、その集団すべてを危険とみなし、理由もなく警戒して、有無を言わさず牢に送るのが正しいことなのか?という問いかけですね。とくにドナルド・トランプが共和党の大統領候補指名を受けることが確定した今、ディズニーがこのようなメッセージを伝えたのは、時代性を強く感じさせます。
一方で、見逃せないのは、正義感に満ちたジュディさえ、いわゆるレッテル貼り、個人同士のつながりや相互理解を軽視して、結果的に差別を助長するような行為をしてしまうストーリー。誰もが誤りを犯す可能性があること、差別問題の難しさを描くことで、いっそう深みのある映画になっています。また事件の黒幕が象徴的で……と、これはネタバレになるので言いませんが。
「だって実際に肉食獣が起こしている事件をそのまま伝えただけだよ。警戒するの仕方ないでしょ」とジュディは言うけれど、それって「だってXX人はこんなにテロ起こしてるじゃない。警戒するのは仕方ないでしょ」という言説が一定の説得力をもってしまう現在の社会状況に直結しているなと思います。まぁ、宗教的融和に関しては、『スポットライト』の記事でも書いた通りあまり組織宗教全般にあまりいいイメージを持っていないぼくとしては、複雑な部分もあるんですが。
ジュディとニック・凸凹コンビと魅力あふれるキャラクターたち
最初は対立しているふたりが徐々に心を許し合っていくところが見ててニヤニヤしちゃいます。ホームズ&ワトソンじゃないですが、息のあったコンビの出てくる作品にははずれがないですよね。
あと、個人的に好きだったのはチーターのクロウハウザー。もともと、チーターって大好きなんです。足が速くて、スーッとスマートで……
……ってめっちゃデブってる! チーター感ゼロ! でもそこがまたかわいいです。泣き虫です。
ズートピアのめっちゃ笑えるところ1:ナマケモノのフラッシュ
なんか難しいことばかり書いちゃいましたけど、あくまでそれは作品に通底しているテーマで、本筋はあくまでエンターテインメント! くすっと笑えるジュディとニックのやり取りは多いんだけど、映画のハイライトは個人的に2点! ナマケモノと、小さいミスタービッグ。
ナマケモノに関しては、そのの~~~~~~~~~~~~~~~~~~んびりとした動きで笑いを取るという、誰が見ても笑えるもので、めっちゃおもしろいです。これは説明不要、というより知らずに見た方が間違いなく笑えますよ。あと名前が「フラッシュ」っていうのも、英語だと「素早い」という意味なのでギャップがおかしいです。
ミスタービッグのゴッドファーザー・パロディ! 絶対字幕版がおすすめ
これがもう本当に最高です。『ゴッドファーザー』観たことがない人は、ぜひ『ズートピア』の前にご覧になっていただきたいですね〜(でもお子さんには絶対見せちゃダメですが笑)。
ゴッドファーザーのドン・コルレオーネ。英語圏ではモノマネの定番のひとつなんですよね。誰もが知ってるキャラクターだし、特徴的なしゃべり方なので。
この『ゴッドファーザー』のオープニングシーンがそのまま登場しているんです。娘の結婚式にやってくる迷惑な客に対応するシーンなんですが、この台詞まわし、声音がマーロン・ブランドーそっくり! その意味ではぜひ字幕版で観てほしいですね。
あと、『ゴッドファーザー』といえば様々な名台詞にいろどられた作品で、ぼくも大好きなんですけど、なかでも一番有名なのは、
"I’m gonna make him an offer he can’t refuse"
「相手が断れないオファーを出す」というこの一節。お金や暴力など、マフィアのドンが持つ圧倒的な力を象徴する台詞なんですけど、これがそのまま出てくるんです。ちなみにこの台詞、『映画史に残るベストシーン』の第2位に入ってます。
このランキングの1位は『スターウォーズ』の「わしがお前の父ちゃんだよ」シーンです(笑)。
パロディ・ポスター
パロディといえば、『ズートピア』のマーケティングで使われた、「動物世界の映画ポスター」が、他の映画作品をアレンジしたもので、とてもおもしろいです。
元ネタ:シンデレラ
シンデレラ+エレファント。象なのでガラスの靴もこんなに大きいってわけですね。
元ネタ:スターウォーズ
これはもう説明の必要もないですね。ジュディがかわいい!
元ネタ:ジュラシックワールド
ジラフ=キリンとかけてるわけですね。こういお笑い要素、とてもセンスがあってうまいですよね。元ピクサーのジョン・ラセターが関わっているのも大きいのだと思います。劇中でも『アナと雪の女王』のパロディシーンがあったり、いろいろ遊び心満載の作品なので、ぜひぜひ!ご覧いただきたい一本です。
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